将棋大図書館

将棋を学べ、ゆったりできる。そんなブログを皆さまにお届けしたい。

書評「奇襲の王様 筋違い角のすべて」

筋違い角スペシャリスト二人による

筋違い角定跡書の決定版

対象者

級位者~初段程度

内容

プロローグ

筋違い角戦法の歴史の紹介と本書で紹介する戦法の概要。筋違い角の創案者やプロとアマの筋違い角の違いなど、読み物としても面白い。

第一章 振り飛車編

f:id:ShogiLounge:20190309194036p:plain

筋違い角でもっともオーソドックスな形が筋違い+四間飛車の組み合わせ。武市三郎自身の実践でもほぼこの組み合わせで筋違い角の中で最もバランスが取れた形。

上図は筋違い角の理想的な展開で、筋違い角の効きが敵陣に直射しており作戦勝ちの展開です。

第二章 相筋違い角編

f:id:ShogiLounge:20190309195200p:plain

相筋違い角は力戦党同士の意地のぶつかり合いで時たま見かける展開です。

後手からの角のうち場所は二通りあり、上図の△6五と△8五です。相筋違い角の方針で大事なことは相手に歩を取ったほうに囲わせて、自分は歩を取られたほうに飛車を振るのが大事。そこの駆け引きも詳しく解説されています。

第三章 居飛車編

f:id:ShogiLounge:20190309195844p:plain

筋違い角+居飛車の組み合わせの紹介。ただ出来る条件が二つあり、後手の攻め足が遅く二筋に玉が近づいていることが条件です。その分破壊力があります。じっくり矢倉などに相手が組んできた場合に狙っていきたい。

第四章 その他

その他では、実践でも遭遇率の高い筋違い角対策の手法を解説しています。

後手無理やり振り飛車型

f:id:ShogiLounge:20190310150925p:plain

振り飛車党が居飛車を指すのを嫌う場合に使う手法で、上図から▲3四角△4二飛で後手は四間飛車に構える。しかし本書の後手が美濃なら向かい飛車から玉頭集中攻撃、金無双なら居飛車に切り替える手法が優秀で筋違い角をもって不満はない印象です。

後手6筋位取り型

f:id:ShogiLounge:20190310151736p:plain

上図から角の逃げ場を用意して▲6六歩は以下△6五歩▲同歩△6六角で後手良しです。上図から▲8八銀△6五歩で角の逃げ場所を狭めるのが狙い。位を取らせて居飛車で戦う将棋もありますが、上図から▲8八銀△6五歩▲7七銀△6二飛▲4八飛からの6筋を逆襲していく手法を紹介しています。個人的に筋違い角対策はこれを愛用していましたが、本書通りの進行を過去何度も受け負けていました。それから羽生流向かい飛車に移行しました。

飛車角交換型

f:id:ShogiLounge:20190310153811p:plain

上図から△6六角を許すとまずいので▲6八飛、そこで△9五角と出て準王手飛車をかけて飛車角交換に持ち込むのが後手の狙い。以下は一歩得と角対飛車で筋違い角側は低い陣形で美濃に囲えるためむしろ望むところの変化という印象です。

△2二飛転換型

f:id:ShogiLounge:20190310154426p:plain

上図はもっとも有名な筋違い角対策の一つで羽生流向かい飛車と呼んでいるのこれです。本書では対策として金無双ではなく、金美濃から積極的に動いてく手法を紹介しています。

第五章 筋違い角後手バージョン

f:id:ShogiLounge:20190310154810p:plain

通常、筋違い角は先手番専用というイメージがありますが、本書では後手番での筋違い角を紹介。先手が何もしなければ通常通りの進行で満足。本書では上図から▲5八金左△7六角▲2五歩からの急戦の攻防を詳しく解説しています。

第六章 武一流実践編

振り飛車党で筋違い角のスペシャリストとして有名な武一三郎の実践集。全10局ありすべて筋違い角+振り飛車(ほぼ四間飛車)の組み合わせ。対談形式で進み、気になる筋など美馬が聞くスタイルで読みやすい。また随所に筋違い角のコツが書かれており感覚を掴みやすい。

第七章 美馬流実践編

アマ強豪の美馬和夫氏の実践集。同じ筋違い角でも筋違い角+振り飛車穴熊という組み合わせ。筋違い角穴熊ならではの呼吸やハメ手の紹介。一発勝負のアマ大会ならではの勝負術を感じました。こちらも同じく対談形式で進み、さくさく読んでいけます。

第八章 武一の筋違い必死&詰将棋

筋違い角を打つ詰将棋と必死問題集。1手詰めから15手詰めまであります。

まとめ

私自身筋違い角の定跡書自体ほぼ読んだことがない状態の時は、対策は有名な羽生流の4五歩と位を取り向かい飛車に展開する指し方で十分だろう、ぐらいの認識でしたが本書を読んでその考えは甘すぎると感じました。おそらくこの本を読むまでに筋違い角の使い手と当たっていたら何も考えずに羽生流を使って本書の定跡通り、筋違い角に有利な進行をしてしまっていたと思います。

本書は主に半分が定跡、もう半分が実戦解説です。定跡部分は簡潔にまとめられている印象、個人的に物足りないと最初感じましたが、そもそも力戦の戦法なので主な狙い筋と実践解説を見て感覚を学び、対局をこなして身につけていくのが本書の使い方でしょう。

定跡、実践集そして詰将棋まであり、ボリューム感がすごいです。筋違い角のコラムの量も多く、まさに筋違い角のすべてというタイトルの名に恥じない素晴らしい本だと思います。

 筋違い角の定跡書自体少ないですが、本書は上記の羽生流の対策や後手番での筋違い角などほぼすべての筋違い角での戦い方を紹介しており、本書をマスターすれば筋違い角をマスターしたといえると思います。

将棋の本棚一覧に戻る