基本形から最新形まで
バランス重視の角換わり
内容と感想
第1章 角換わりの基本ー平成と令和の違い
平成の基本図
従来の角換わりの基本図ともいえる腰掛け銀同型の局面に至るまでの手順と考え方から仕掛けまでを解説。
令和の基本図
序盤の駒組が従来の腰掛け銀と違う点(▲2五歩を早々に決める点など)や、序盤の注意点を解説。
第2章 有名定跡
棒銀
棒銀に対する後手の対抗策として、△5四角と打つ形と△1四歩と端を突く形の二通りの受け方を解説しています。
腰掛け銀
角換わり腰掛け銀同型の攻防では先手の仕掛け手順として、「42173」と順番に歩を突き捨てていくことで後手が手抜きしにくい形で仕掛けた後の攻防を解説しています。
第3章 早繰り銀
先手早繰り銀に対して後手の対策は大きく分けて2通りあり相早繰り銀で対抗するか、腰掛け銀で対抗する指し方があります。
相早繰り銀
先手早繰り銀に相早繰り銀で対抗する指し方。
先手の攻めに対して反撃含みで指す攻め合い重視の指し方です。
腰掛け銀
先手早繰り銀にに対して△5四銀から腰掛け銀で対抗する指し方。
早繰り銀と違い、じっくりとした将棋で受け重視の指し方です。
第4章 ▲4八金ー▲2九飛型
▲4五桂急戦
角換わりを指すならもはや必修と言える形で、先後両方を持って指せるようにしておくべき形です。
▲4八金ー2九飛型
バランス重視の角換わりの時代となり、上図は現代角換わりのテーマ図です。
本書では上図の形をメインにページの約半分ほどを解説しています。
まとめ
有段者向けの角換わり本といえば「現代角換わりのすべて」「斎藤慎太郎の角換わり腰掛け銀研究」などが定番としてありますが、級位者向けの角換わり本といえば「角換わり初段の常識」ぐらいしかなく、そんな中新たな角換わり入門書として出版されました。
そのため本書を読むにあたって、購入層が被ると思われる「角換わり初段の常識」と比べながら読んでいきました。
まず大前提として「角換わり初段の常識」は棒銀、早繰り銀、相腰掛け銀の定番形を解説しつつ、アマでは多い対右玉も解説している貴重な定跡書で、最新の▲4五桂急戦や▲4八金2九飛型も触れる程度ですが解説、角換わりの入門書的な立ち位置にあります。
「角換わり初段の常識」と本書を比べた時の大きな違いとして、2年ほど後に出版されたということもあり、現在では主流となった▲4五桂急戦や▲4八金2九飛型をメインに解説しているという点が本書の強みで、ページの半分ほどを占める割合です。そのため級位者で▲4五桂急戦や▲4八金2九飛型をメインに勉強していこうと考えているならお勧めできる内容となっています。
総評として、「角換わり初段の常識」より難易度こそ高いものの、最新の角換わりを学びたいが「現代角換わりのすべて」や「斎藤慎太郎の角換わり腰掛け銀研究」は難しすぎるといった層向けにおすすめしたい内容でした。
角換わり全体を学びたいなら「角換わり初段の常識」、▲4五桂急戦や▲4八金2九飛型をメインに据えて角換わりの一冊目を選ぶなら本書といった形がしっくりくる棲み分けの仕方と思いました。