後手急戦に真っ向勝負
先手矢倉の逆襲
内容と感想
序章 現代矢倉の基本
後手の急戦矢倉事情、▲2五歩型の登場、▲7七銀型と▲6六歩型の違いなど、従来の矢倉と違う点を解説しています。
第1章 ▲7七銀対△7三銀急戦
基本的に先手矢倉に対して後手側の有力な仕掛けとされているのが大別して第1章の早繰り銀型と第2~3章の桂を使った急戦に分けられます。
第1章の早繰り銀型に対して先手矢倉側として3つの作戦があります。
第1節 横歩取り作戦
第1節では△7三銀型に対して横歩を取る作戦。
横歩取りのような中住まいに構える形など、従来の矢倉の戦型と比べて新しい指し方になります。
第2節 ▲6六銀型
▲6六銀型の狙いとして△8五歩に▲7七角で飛車先を受ける指し方で矢倉ではあまり見かけない形ですが、左辺はしっかりしているので攻めに専念できる形なので攻め好きの方にお勧めの指し方。
第3節 棒銀
棒銀に出る指し方も有力とされおり、プロの実践例も多い形。
第2章 ▲7七銀対△6四歩型
第2章では△7三銀型ともう一つ、△7三桂から桂馬を軸に攻めていく形で△7三銀型に次いで指されている形です。
先手側の対策としては△7三銀型と似ている部分もあり、棒銀に関しては△7三銀型で解説された変化があり割愛されています。
第1節 横歩取り作戦
△7三銀型でも出てきた横歩取りの筋は△6四歩型にも有力な作戦で、後手側としては△3三角と上がるか△4四角と上がるかで展開が変わります。
第2節 ▲6八角型
▲6八角の意味は△6五桂~▲6六銀の時に△8六歩からの飛車先交換からの攻めを防ぐ意味があります。またじっくりとした矢倉らしい展開になるので矢倉党の方にお勧めの指し方です。
第3章 ▲7七銀対△7三桂型超急戦
▲7七銀型に対して△7三桂~△6五桂の速攻を狙う指し方で一気に終盤戦になる変化が多く対策は必須です。
第4章 ▲6六歩対左美濃急戦
第1節 7四歩型
筆者の研究を中心に紹介されており、▲6六歩型でも攻勢を見せるのが大事。
ただ居玉で後手の攻めを踏ん張る順や後手が堅陣の美濃囲いの点を考えると指しこなすのは相当難しいと感じた。
第2節 △5四銀型右四間飛車
△5四銀は△7三歩型のまま組む指し方で、△7九角から引き角に使うのは△6五歩の攻めを誘発することになり危険。本書では中住まいからバランスで対抗する作戦を解説しています。
第5章 ▲6六歩対△7三銀急戦
▲6六歩型に対して△7三銀からの早繰り銀を目指してくる形。
先手としては▲5八金から守りを優先するか、▲2六歩から攻め合いを目指す二通りの形を解説しています。
第6章 実践集
VS 西尾明七段
VS 青島未来六段
VS 橋本祟載八段
まとめ
一時期先手矢倉は風前の灯火でほぼプロ間では指されない時期がありましたが、現在では様々な工夫を施し復活しました。
先手矢倉が試行錯誤され指されるようになりましたが、後手側の急戦策も進化しており一筋縄ではいきません。
対△7三桂超急戦
△7三桂超急戦は タイトル戦でも指されており、一気に終盤戦に突入する一直線の変化が多く対策は必須で現代将棋の序盤戦の繊細さが現れています。
対左美濃
上図からは▲7九角~▲4六角や▲2四歩~▲2四飛から横歩を取る手など絡める手でやはり攻め合いを目指します。対左美濃の章に関しては研究を紹介する形です。
本書は石井六段の研究とともに先手矢倉を指す上で、後手からの急戦に対応できるように様々な研究を披露しており、内容がかなり充実しています。
ただその分内容的には高度な内容になっており、級位者目線で見ると「矢倉は終わらない」の方が易しめの内容になっています。
基本的に後手急戦に対して先手側は攻め合いを目指し、一方的な展開を避けるのが先手矢倉の共通している点で、先手矢倉を指しこなすのを目指すなら本著は必読です。