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書評「将棋・序盤完全ガイド 相居飛車編【増補改訂版】」

昭和の時代から平成の最新形まで、

相居飛車の歴史を辿る。

対象者

観る将でプロの対局を見る方。

相居飛車の全体像を知りたい。

相居飛車の歴史を知りたい。

内容

第1部 相居飛車の基礎知識

第一部では、級位者に向けて(観る将棋ファン、級位者、特に10級~15級クラスの方も幅広く対象と明記)相居飛車の基本から六大戦法(横歩取り、角換わり、矢倉、相掛かり、一手損角換わり、雁木)の特徴をわかりやすく解説されています。

第1章 相居飛車の基本

序盤の基本から、そもそも相居飛車とは何なのかといった所から丁寧に解説。

第2章 六大戦法の囲いと基本

角換わり、矢倉、相掛かり、横歩取り、一手損角換わり、、雁木を六大戦法として各戦法ごとの特徴と基本の解説。また各戦法ごとにその戦法が得意な棋士を羅列紹介しており、棋士ごとの得意戦法も覚えられる。

第3章 戦型決定の仕組みと手順

相居飛車では振り飛車と違い自分が得意な戦法にするには誘導する必要がある。またそれでも確実に指せるわけではなく、相手との駆け引きと各戦法ごとの誘導の仕方の解説。

第2部 歴史を振り返る

第2部では、相居飛車全体での戦法の流行りを紹介しています。

第1章 相居飛車の歴史

大きな流れとして、

矢倉全盛期時代→各戦法が細かく進化→中座飛車、一手損角換わりの登場→矢倉の危機(美濃急戦などではなく、相矢倉で先手が▲4六銀▲3七桂型を目指して▲4六銀と出たときに後手が△4五歩と反発する指し方。)→そして現在といった流れになります。

第2章 相居飛車におけるキーワード

第二章では従来(昭和〉、平成25年、平成30年度別に4つのキーワード(1飛車先の歩の位置、2玉の堅さ、3角交換、4後手の方針)とともにどのように変化していったかを解説しています。

代表的な変化として玉の固さがありますね。従来は玉の堅さをあまり重視せずバランス傾向でしたが、平成25年ごろは居飛車穴熊などの堅さが猛威を振るい、隙あらば穴熊に組むといった堅さを重視する時代というのは有名な話。平成30年度ではバランスを重視する将棋が増えました。そのことについても解説されています。

第3部 相居飛車の六大戦法の解説

第3部では、各戦法ごとに先手と後手の攻防の歴史を紹介しています。従来(昭和)から初まり、先手と後手の攻防を見ながら現在の最新形にどのようにして至ったのか詳しく解説されており、戦法の知識をより一層深めることができます。

分かりやすいよう簡単に従来と最新形を自分なりに書いておきます。

第1章 角換わり 大ブレイク、相居飛車のエースに

従来

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上図は有名な木村定跡という形で昭和20年代の同型です。ここから▲4五歩と仕掛けて先手必勝が確立しました。ここから角換わりでは後手の様々な工夫や変化が始まったのです。

最新形

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後手の行き着いた先がこの下段飛車+金の組み合わせです。

第2章 矢倉 絶対エースがまさかのピンチ

従来

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上図は有名な矢倉24手組です。ここからスズメ刺しを目指すのが升田九段考案の指し方です。

最新形

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上図は有名な左美濃急戦です。また先手がなぜ矢倉を組めなくなったなど詳しく解説されています。

第3章 相掛かり 飛車先を交換しない新型登場

従来

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▲2六飛と引いて先攻する形が主流。

最新形

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飛車先保留する形が主流に、なぜ保留するかなど詳しく解説されています。

第4章 横歩取り 先手が積極的に優位を求める

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先手は一歩得を主張し、じっくり指すのが主流。

最新形

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自分から良さを求めて積極的に攻めていく青野流が先手横歩取りの主流に。

第5章 一手損角換わり 角換わりのパラレルワールド

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一手損することで、上図の局面から△8四歩型にし、△8五桂跳ねの余地を作ったのが一手損角換わりの始まり。

最新形

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一手損を咎めるために棒銀や早繰り銀などの急戦策が主流。

第6章 雁木 オールドな大型新人登場

従来

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従来の雁木は右四間飛車などと組み合わせて攻める戦法です

最新形

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右銀の位置がかわり、ツノ銀雁木などと呼ばれます。陣形のバランスがよく角交換に強い。また後手の手を見て柔軟に駒組することができる。

まとめ

戦法書ではなく、相居飛車の歴史書といった形で級位者も有段者も楽しく読める稀有な例です。また図に色付けや矢印をふんだんに使っているので視覚的にも読みやすいです。

昭和50年代から現代にいたるまでの相居飛車の歴史は、物語を読んでいるかのようにさくさく楽しく読んでいけました。

また各戦法の歴史をを紹介しながらなぜそのような指し方が必要になったのかといった、各戦法ごとの狙い筋や感覚を知ることができます。

これ一冊で定跡を完璧にすることは出来ませんが、相居飛車の各戦法の現在の立ち位置、全体像がこれ一冊で分かるようになります。

この機会に居飛車の定跡だけでなく、歴史に触れてみてはいかがでしょうか。

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