将棋大図書館

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書評「将棋・序盤完全ガイド 相振り飛車編」

相振り飛車の全体像と

辿ってきた歴史を解説した本。

対象者

相振り飛車の基本と全体像を把握したい。

相振り飛車が何となく苦手で避けている。

相振り飛車のこれまでの歴史を知りたい。

内容

序盤ガイドシリーズの3巻目。構成は従来と同じで、第1部で級位者向けに基本と全体像の解説、第2部で相振り飛車全体での歴史の解説、第3部では各戦法ごとの進化と特徴をまとめる構成です。

第1部 相振り飛車の基礎知識

第一部では級位者に向けて(観る将棋ファン、級位者、特に10級~15級クラスの方も幅広く対象と明記)相振り飛車の基本的なところから解説しています。

第1章 相振り飛車の全体像

将棋の序盤は相居飛車、相振り飛車、対抗系があるということの基本から、相振り飛車の主な特徴をまとめています。

第2章 攻撃形と囲いの基本

飛車を振る位置と攻撃形、それぞれの囲いの特徴をまとめています。

特にこの章は級位者に特に読んでほしい章でそれぞれの振り飛車の長所、短所や囲いとの組み合わせ、攻めるための陣形などしっかり覚えてほしいです。

第3章 相振り飛車の作戦決定の仕組み

相振り飛車になるまでに双方様々な駆け引きや形があり、フローチャートで分岐図をわかりやすく解説しています。

第2部 相振り飛車の歴史を振り返る

第1章 相振り飛車の歴史

大きな流れとして、昭和の先手向かい飛車対三間飛車(▲7六歩△3四歩▲6六歩からの先手振り飛車志向に△3二飛と相振りにする形)の力戦→振り飛車党棋士の台頭→矢倉や先手振り飛車を目指す三手目▲6六歩への対策→中飛車左穴熊登場、そして現在といった流れとなります。

第2章 囲いの進化論

従来は相振り飛車といえば、金無双が当たり前でしたが矢倉や穴熊、特に▲3九玉型美濃など様々な囲いが用いられるようになりました。

第3部 相振り飛車、四つの戦法の解説

それぞれの振り飛車の長所、短所や理想の展開避けたい展開など丁寧に解説されています。また各戦法ごとの現在の最新形も解説されています。

第1章 先手向かい飛車 攻守にバランスの取れた相振り飛車の老舗

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三手目▲6六歩から始まる相振り飛車で最も指されているのが上図のような先手向かい飛車対三間飛車です。

第2章 先手三間飛車 攻撃重視、現在の主流戦法

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石田流志向の先手への対策として相振り飛車を目指す形。

第3章 先手四間飛車 臨機応変、幅広い指し方が楽しめる作戦

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角交換四間飛車の流行で三手目▲6六歩ではなく、三手目▲4八飛が台頭。

第4章 先手中飛車 左に囲う発想が相振り飛車に革命を起こす

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従来は中飛車は相振り飛車に向かないといわれていましたが、中飛車左穴熊の登場により中飛車の序盤に革命が起こる。

第5章 序盤の駆け引き編

 お互いが振り飛車党の場合に駆け引きで▲9六歩と手待ちする指し方がありそれの解説をしています。

まとめ

将棋・序盤完全ガイドの3作目で、歴史書的な位置付けは変わらず高クオリティを保っています。相振り飛車での難しいイメージの多くはどう攻めていいか分からない、相手の飛車の位置との組み合わせの多さなどが大きくあると思います。

本書ではそれぞれの振り飛車(中飛車、四間飛車、三間飛車、向かい飛車)の飛車の位置によって長所、短所、そして理想の展開や逆に避けたい展開などそれぞれ丁寧に解説しており、自分の振り飛車は理想形を目指しつつ、相手の振り飛車には避けたい展開に持っていくという目標ができ、相振り飛車の苦手意識も克服していけると思います

従来の相振り飛車といえば、力戦のイメージが強いですが近年急速に定跡が発展し、なんとなく指すというのは厳しい印象で、少なからず定跡の勉強は必要です。

その初めの一歩として相振り飛車の全体像、そして歴史を学べる本書は打ってつけと言えるでしょう。