将棋大図書館

将棋を学べ、ゆったりできる。そんなブログを皆さまにお届けしたい。

【書評】進化する角換わり▲4五桂

序盤の革命▲4五桂速攻

様々な最新形を解説

内容と感想

第1章 先手居玉型

f:id:ShogiLounge:20210916214754p:plain

まず▲4五桂に対しては二通りの受け方があり、△4四銀と上がるか△2二銀と引いて受けるかです。

この二通りの受け方は第1章~第4章すべてで共通する受け方でそれぞれの攻め筋の違いなどは理解しておく必要があります。

居玉型のポイントとしては後手の△6四歩が浮いていることに狙いをつけます。

第2章 先手▲3八銀・6八玉型

f:id:ShogiLounge:20210916214909p:plain

居玉型より玉形を整備した形で、△6四歩は浮いていませんが▲7五歩と仕掛ける筋が生じています。形によっては駒組にシフトする変化もあります。

第3章 先手▲4八銀・5八金型

f:id:ShogiLounge:20210916214952p:plain

△8一飛と引いた瞬間に仕掛ける形で、今までと違い後手の飛車の横効きが一瞬なくなるのがポイント。

第4章 先手▲4八金・2九飛型

f:id:ShogiLounge:20210916215051p:plain

角換わり▲4八金2九飛型の定番の形で、後手が△5二玉~△4二玉と手待ちした場合に現れる局面です。

一つ注意点として、今までは▲3五歩と突き捨てていましたが、この形で突き捨てると▲3五歩△同歩▲4五桂に△3四銀と受ける形が好形で先手が不満の別れとなります。

そのため単に▲4五桂と跳ねるのが有力。

第5章 ▲4五桂対早繰り銀

f:id:ShogiLounge:20210916215206p:plain

後手早繰り銀に対しての▲4五桂急戦でこの形では▲3五歩の突き捨てを入れずに単に▲4五桂と跳ねる。

まとめ

▲3五歩の突き捨ての意味

f:id:ShogiLounge:20210919211833p:plain

そもそも▲4五桂と仕掛ける前に▲3五歩と突き捨てておく意味については知っておいた方がいいでしょう。

角換わり▲4五急戦の定跡で▲4五桂急戦の基礎を解説していますので目を通しておくと分かりやすいかもしれません。

△4四銀か△2二銀か

これは後手側の悩みになりますが、△4四銀か△2二銀どちらにするかは難しいところで、それぞれにメリットデメリットがあり、形によって使い分ける必要があります。

本書でもどちらにするかは形によって違い、それぞれの変化について解説しています。

△4四銀型の強みと弱み

攻めを一旦止めることが出来る

f:id:ShogiLounge:20210919212127p:plain

△4四銀で攻めを受け止めてから、△6五歩と反撃する。

上図は一手パス型に対して▲4五桂と仕掛けた形で、それに対して△4四銀と上がった形です。(2020年に将棋界で流行った戦法を振り返るの角換わりの欄を参照していただくと分かりやすい)

この場合先手の玉の位置が▲8八にいるため、△2二銀と引いて先手の猛攻を浴びるより、△4四銀から一旦攻めを止めて、攻め合いを目指した方が先手玉の当たりが強く、後手としては分かりやすいという好例でしょう。

二筋が薄い

f:id:ShogiLounge:20210920215039p:plain

△4四銀型は二筋が薄く、1~2筋を絡めて攻められる筋に弱い。

△4四銀型は5筋に効きがあり、中央は手厚いですがその分2筋が薄く、▲3四角が痛打になりやすいです。

f:id:ShogiLounge:20210920214917p:plain

▲3四角に△3二玉を用意

ただし△2二金の受けが有力な変化としてあり、第2章~第3章で解説されています。

△2二銀型の強みと弱み

桂取りの楽しみが主張

f:id:ShogiLounge:20210922131259p:plain

△4四歩からの桂取りが楽しみに残る

△2二銀と引く手は△4四歩からの桂取りを見ており、取り切れれば後手が良くなる。

ただし、先手も桂馬を取り切られる前に猛攻を仕掛けてくるので上手く受けれるかが焦点となる形です。

中央が薄い

f:id:ShogiLounge:20210920215304p:plain

二筋は堅いがその分、中央が薄い

第4章▲4八金・2九飛型で△4四銀ではなく△2二銀と引いた局面が上図で、△4四銀型と違い二筋は堅いのですが、その分中央が薄くなります。

そのため▲5三桂成から桂馬のただ捨ての攻めが、先手にとって有力な攻め筋になっています。

このように△2二銀か△4四銀かは一長一短であり、お互いの陣形を見てどちらがより有力か選ぶ必要があるのです。

玉形はどれがいいのか

そもそもの▲4五桂急戦でなぜいろいろな玉形が本書で解説されているのか、本書では定跡のみ解説がなされているので補足としてそれぞれの陣形の利点などを紹介しておきます。

第1章 先手居玉型

f:id:ShogiLounge:20210922132644p:plain

自然に進行すれば、ほぼ上図の局面に

短手数で最速の攻めなので紛れが少なく、後手からの変化が少ない。

本書では端歩の交換を入れた形を解説しており、端歩の交換を入れていない形に関しては「神速!角換わり▲2五歩型必勝ガイド」に詳しく解説されています。

第2章 先手▲3八銀・6八玉型

f:id:ShogiLounge:20210922133135p:plain

後手から△6五歩▲同歩△7三桂という攻め筋もあります

第1章の居玉型よりも金銀のバランスが良く、また居玉を避けている分、飛車を捨てた攻めを行いやすい。

ただ本書で解説されていない変化として、▲3五歩と突き捨てる前に、早い▲6六歩を咎める意味で後手から△6五歩▲同歩△7三桂の攻め筋もあり互角の変化ながらも注意が必要な変化です。

▲4八金2九飛型に合流できるので、後手の指し方を見つつ隙あらば仕掛け、無理そうなら駒組を進める柔軟性を持っています。

第3章 先手▲4八金・5八玉型

f:id:ShogiLounge:20210922133526p:plain

▲3五歩に△同歩が自然ですが、△6二金も有力な変化の1つ

第3章の変化では▲3五歩の突き捨てに△同歩が自然ですが、本書で解説されていない変化で△6二金と指す穏便策も有力でプロ間でも指されており、対策は必要になってくると思います。

第4章 先手▲4八金・2九飛型

f:id:ShogiLounge:20210923153852p:plain

後手から△6五歩位取り、端歩無視、一手パス型など後手から変化する形が多く、初めから狙うのは難しいです。そのため相腰掛け銀での先手の打開策の方法の1つとしてレパートリーに入れておくというのが現実的でしょう

玉形が整えば整うほど後手側が変化しやすくなるので個人的に▲4五桂急戦を最初から狙うなら居玉型が一番紛れが少なく実践的な指し方のように感じています。

一方で後手が隙を見せた時は▲4五桂急戦を指したいというスタンスなら▲3八銀・6八玉型や▲4八金・2九飛型が他の形とも併用出来るためおすすめです。

総評

本書では角換わり▲4五桂急戦の指し方や考え方といった基礎的な部分については知っている前提で進みます。そのため▲3五歩突き捨ての意味や△2二銀か△4四銀か、玉形はどれがいいのかといった初歩的なことについては本書の内容で知っておくべきこととして補足しておきました。

またソフトを使用して確認作業をしており精度は高いのですが、その分内容的にも高度で全体的に有段者向けの内容になっています。

先手で▲4五桂急戦を指そうと思っている人はもちろんですが、後手番で▲4五桂急戦を迎え撃つなら様々な形の学べる本書は、▲4五桂急戦対策本として力になってくれる一冊だと感じました。