将棋大図書館

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書評「羽生善治の戦いの絶対感覚」

絶対感覚シリーズ第三弾。

棋士の感覚、戦いの考え方。

序盤、中盤、終盤を羽生九段自身が解説。

対象者

有段者向け

序盤、中盤、終盤の感覚をより身につけたい方

内容

43のテーマ局面をプロの実践から序盤、中盤、終盤で次の一手形式で解説。

第1章 序盤の絶対感覚

序盤は全18のテーマ別に捌きの手順、押さえ込みについてなど、様々な序盤の感覚を学びます。

個人的に印象的だったテーマが、何気ない瞬間、突き捨ての順番、序盤の不注意の3つのテーマです。強くなってくると序盤でのポカはなくなっていき無難に進んでいきますが、プロの対局でも手順前後など少しの変化でリードを奪う将棋などがあり、何気ない序盤でも嗅覚を働かせることが大事です。

テーマ 序盤の不注意

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よくある角換わりの序盤戦ですが、ここで先手に機敏な一手があります。

それが▲3五歩で△同歩は▲4五角があります。なので▲3五歩に△3二金と受けますが、▲3四歩△同銀として形を乱すことに成功します。

第2章 中盤の絶対感覚

中盤は全16のテーマ別に遊び駒を作らない、穴熊の捌きなど基本的なことから難し目のテーマまで中盤の感覚を学びます。

個人的に印象的だったテーマが、有効な手渡し、確実な一手の2つのテーマです。

テーマ 確実な一手

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上図は相矢倉の中盤戦です。形成判断をすると先手の一歩得、後手からの速い攻めはないこと。以上のことを考えて攻めを考えます。

上図から一歩得を生かして▲7五歩の桂頭攻めが第一感です。しかしそれは△7五同歩▲7四歩△4五銀▲7三歩成△同角▲4五銀△4四歩で銀が取り返され玉頭に△7六桂の傷も出来てしまいます。

戻って上図から▲3五歩も考えられます。以下△同歩▲3三歩△同桂▲同桂成△同金直で今一つです。

ここでは▲2八飛とじっと戻る手が好手です。次に▲2五歩~▲5九角から▲1五歩や▲2六角の転換など確実な攻めがあります。

自分自身、手が詰まってきた中盤戦では焦って暴発してしまい、無理攻めをしてしまうことがありました。そんな局面でも冷静に局面を見極め、ゆっくり確実な攻め、早い攻めなど使い分ける大切さを学びました。

第3章 終盤の絶対感覚

終盤は全9のテーマ別に、決め手を探す、最終盤の考え方など基本的なものから最終盤らしい難解なテーマのものまで終盤の感覚を学びます。個人的に印象に残ったテーマは玉頭戦の攻防です。

テーマ 玉頭戦の攻防

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上図は△2四龍とした局面です。玉と玉が近い玉頭戦は攻防の一手が出やすく複雑です。羽生自身もこの局面で間違ってしまったほどです。すべての変化を書ききれないので正解手順を示すと▲3四歩△同銀に▲3三銀と放り込むのが唯一の勝ち筋で以下の寄せの解説もかなり難解でした。

まとめ

絶対感覚シリーズの中で本著は枝分かれの変化が多く、一番難易度が高いと思いました。

プロがどのようなことを考え指しているのか、いわゆる大局観を知ることができます。

感覚でひと目の筋に見える手でも、次の一手の答えを見てみると、より深く先を読んでみると実はダメな変化だったということが何度もあり、読みの深さの大切さをしみじみと感じました。またその局面、局面での急所を見極める力の上達にはとても有効だと思います。