将棋大図書館

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書評「コンピューター発!現代将棋新定跡」

ソフトがもたらした新戦法を解説

アマ将棋ソフト研究家の意欲作

対象者

角換わり▲4五桂などの対策を知りたい

プロで流行しているソフト流の指し方を学びたい

内容

それぞれの章の初めにその戦法の生まれた歴史的背景の紹介→内容→まとめといった流れになります。

第1章 角換わり▲4五桂

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角換わり腰掛銀または第2章の▲4八金型をを指す人にとって角換わり▲4五桂対策は必須科目と言えます。特に近年は後手が△4一玉と一段目を這う囲い方は▲4五桂と跳ねたときに△5三の地点に数が足りずに攻めが決まりやすいためほとんど見ません。また第2章の▲4八金の登場もあり今はほぼ△4二玉から囲うのが常識となっています。

本章では▲4五桂に対して後手の細かい駒組の違いでの成立条件や攻め筋を解説しています。

第2章 角換わり▲4八金

現在、プロ将棋界での採用率も高く、アマ将棋でも遭遇率はかなり高いです。

▲5八金対△6二金△8一飛

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先手が通常の腰掛銀の構え対後手△6二金△8一飛型の解説です。NHK杯の千田対村山戦で有名になり、指され始めた当初は上図のようにどちらかが引き飛車の構えを取るというのが主流でした。

▲4八金・△6二金型

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先後同型の解説で現在の角換わりはほぼこの形と言っていいでしょう。先手も同型に組むのが現在の角換わりの主流です。

本章では最初に同型▲2六歩型(上図)→同型▲2五歩型の順の解説です。

第3章 雁木

先手後手とはず序盤の誘導性の高さからこちらも角換わり▲4八金と同じで遭遇率が高いです。

矢倉対雁木

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上図が従来の形で角換わり模様から△4四歩で雁木に誘導する指し方。通常であれば先手は▲6八角~▲2四歩で角を交換しながら2筋を交換する手が常套手段で味がいいですが、雁木はバランスがよく角打ちの隙がないのでむしろ後手のやれる変化です。

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角交換は雁木に有利に働くので▲3七銀から棒銀に出る手の攻防を解説しています。

▲6八銀型雁木

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角換わり模様から△4四歩と雁木に誘導しましたが、先手の左銀の位置が▲8八銀ではなく▲6八銀と上がっています。▲4八銀型の狙いは最小限の玉形から速攻を目指すことです。先手▲3六歩~▲3七銀からの棒銀と▲4六歩~▲4七銀からの右四間飛車での攻防を解説しています。

4手目△4四歩からの雁木

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四手目に雁木を目指す指し方で必ず雁木に組めるのが利点。上二つの角換わり模様から雁木に誘導する指し方だと▲7六歩△8四歩▲2六歩△3二金に▲7六歩でなく、▲2五歩と突かれると相掛かりになってしまう、それも一局ですが四手目△4四歩なら必ず雁木に組むことができます。矢倉などに組みに行く順は上の矢倉対雁木に合流するので本項目では先手が積極的に動いていく対策が解説されています。

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先手の対策として二通りあり、まずは左美濃の骨格で最小限囲い、▲3五歩から積極的に攻めていく形。

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もう一つは▲4六歩から右四間飛車に構える形で雁木対右四間飛車の形になります。

先手雁木

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プロ間で雁木を好む棋士が先手でも雁木を採用する将棋が増えてきました。後手の指し方も様々な形があり、それに対しての対策の解説といった形です。特に先手雁木は急戦にも強く、有力戦法の一つです。

第4章 相掛かり△7四歩取らせ

相掛かり△7四歩取らせは一歩を犠牲に右銀をスムーズに前線に送れるのが特徴です。

▲8三歩型

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一部の相掛かりを指すプロ棋士も採用している戦法で、先手の歩得対後手の手得の戦い。

△8五歩型

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△8五歩と▲7七角と上がらせた形での△7四歩取らせ。

まとめ

本書は先手後手双方どちらかに偏った解説ではないので戦法書として、また対策書としてどちらとしても読むことができます。本書のあとがきでも「角換わり▲4五桂にやられて困っている」「雁木の対策を知りたい」といった対策書としての使い方もおすすめしています。

全体的に内容は難し目です。角換わり▲4八金と雁木の章は特にボリュームがあり、読み応えたっぷりでした。コンピューター特有のじりじりとポイントを挙げていく指し方は参考になります。自分は気になった変化をソフトで検討しながら少しづつ読み進めていきました。

本書で紹介された戦法はどれも目新しいものばかりで発展途上だと思います。それをこのように体系化し、定跡書として仕上げたのは並大抵なことではなく、ソフト研究という分野を開拓している著者には敬意を示したい。

本書を通して、プロ棋界にも浸透してきたソフト流の戦法を習得してみてはいかがでしょうか。