四間飛車激増の理由
四間飛車の最新研究
内容と感想
第1章 対エルモ囲い
第1節 エルモ囲い
第1節ではエルモ囲いの成功パターンを見ていきます。
特に単純な攻め合いに関しては上図のようにエルモ囲いに有利に働く展開が多く、避けるべき展開です。
第2節 △4三銀型
△4三銀型の大まかな方針として、「角を交換せずに相手の角を捌かせないこと」としており、後述する△3二銀型と比べて受け重視の指し方になります。
第3節 △3二銀型
△3二銀のまま戦うのも有力な指し方で、△4五歩からの反発を切り札に戦います。
第2章 対左美濃・銀冠・一直線穴熊
▲6六角と上がり銀冠に組んでから穴熊を目指す指し方で、いわゆる一直線銀冠穴熊と呼ばれている形です。
これに対しては地下鉄飛車から玉頭攻めを目指すのが決定版の対策です。
第3章 対トーチカ
第1節 美濃囲い△6四金型
△6四金型が対トーチカに有力な構えです。
ただし美濃囲いの場合△7四歩が必要な手(△5五歩▲同歩△同金で▲7五角と逃げられる変化を消す意味)でコビンが空いてしまうため後述する△7二玉型が修正案として優秀な形です。
第2節 △7二玉・6四金型
この形については2020年に将棋界で流行った戦法を振り返るでも紹介させていただいており参考にしていただきたい。
トーチカは桂頭と中央が弱く、この2つを攻めるのが振り飛車の基本方針になります。
第4章 居飛車穴熊対△9五歩型高美濃・銀冠
端歩の位を取れた場合は美濃で戦います。
角を転換してくる形に対しては△5二銀型が好形で、先手が手を作るのが難しく後手十分の形です。
7筋交換型にも△5二銀と引いて起き、端攻めのカウンターを目指せば後手十分です。
第5章 ▲9六歩型穴熊対振り飛車ミレニアム
端歩突き穴熊に対してはミレニアムが優秀で端攻めの反動から遠い、△6五歩からの攻め筋などがあり有力な作戦です。
第6章 最新駆け引き
第1~5章までで紹介した戦法の最新の変化。
まとめ
第1章の対エルモ囲いと四間飛車の永遠のテーマともいえる穴熊との戦いを解説した第4~5章が特に力を入れて解説されています。
第1章 対エルモ囲い について
とっておきのエルモ (マイナビ将棋BOOKS)(レビュー記事)や対振り飛車の大革命 エルモ囲い急戦 (マイナビ将棋BOOKS)など居飛車側でエルモ囲い急戦を解説した本はありましたが、振り飛車側で解説されている定跡書というのは貴重で、特に振り飛車側での戦い方の方針といった今まで語られることのなかった振り飛車目線での解説がされており、エルモ囲いに対する戦い方を学ぶなら現状本書一択でしょう。
第5章 ▲9六歩型穴熊対振り飛車ミレニアム について
端歩の関係で玉形を変える
端を突き越せた場合、端攻めの反動が少ないこともあり従来通り美濃囲いで戦う手順で十分と解説されています。
しかし近年、端歩受け穴熊の登場で端の関係に変化が現れました。
端を受けられた場合、美濃囲いでは端攻めでの攻防の際に玉が近く、反動がきついという問題がありました。
そこに現れたのがミレニアムで、美濃囲いより一段深く、端攻めの攻めから遠くなっています。
こういった背景があり、端を付き越せれば美濃、端歩受け穴熊にはミレニアムといった構図が生まれました。
新たな攻め筋
またミレニアムの利点の一つとして、美濃囲いと違い角筋に玉がいないため、△6五歩から桂馬を使った攻め筋があります。
これが従来とは違う点で隙あらば△6五歩から開戦していけるのも強みの1つです。
このように居飛車の端歩の有無や陣形によって四間飛車は玉形を柔軟に変えることで居飛車穴熊に対応、本書でも「相手の陣形に対応した囲いをいかに使いこなすか」ということが現代四間飛車のテーマとして語られています。
四間飛車の最新形ということもあり、難易度も高いですが、四間飛車の最新形を網羅した一冊として完成度は高く、最新形を追う四間飛車党の力になること間違いなしの一冊でした。