現代相掛かりの総合書
▲5八玉型相掛かりの基本
内容と感想
第1章 5八玉型VS4二玉型
上図が第1章における基本図で、後手の飛車の引き場所により指し方が変わり、具体的に△8五飛、△8二飛、△8四飛と後手の飛車の位置別にそれぞれ解説。
第2章 5八玉型VS3つの作戦
早めの飛車先交換
後手が飛車先をすぐに交換してくる作戦。
この変化は飛車先保留相掛かりの思想が存分に生かされる手順で、現代相掛かりの基本ともいえる変化です。
居玉早繰り銀
上図から▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲7四飛の横歩取りと、上図から▲7六歩△7三銀▲6六角から積極的に動いていく順を解説。
先後同型策
先後同型で最新の形です。本書では主要変化をに触れる程度。
第3章 最新の▲9六歩
▲9六歩は角の働きを楽にし、▲7六歩や▲3六歩を突きやすくした手。
玉の位置も保留している点などメリットは大きい手で、最新形の一つです。
第4章 実践解説編
実戦例1 自然な流れでリードを奪う 対 先崎 学九段 第91期ヒューリック杯棋聖戦一次予選
実戦例2 厚みを築いて作戦勝ち 対 及川拓馬六段 第27期銀河戦本戦Fブロック
実戦例3 角を封じる位取り 対 富岡英作八段 第45期棋王戦予選
実戦例4 積極的構想を迎え撃つ 対 宮田敦史七段 第45期棋王戦予選
実戦例5 駒組みの落とし穴 対 行方尚史八段 第60期王位戦予選
実戦例6 端歩の一長一短 対 千田翔太六段 第90期ヒューリック杯棋聖戦二次予選
実戦例7 歩得vs手得 対 稲葉 陽八段 第60期王位戦挑戦者決定リーグ紅組
実戦例8 思惑を外される 対 佐々木勇気七段 第90期ヒューリック杯棋聖戦一次予選
実戦例9 鉄壁の銀冠 対 広瀬章人八段 第45期棋王戦挑戦者決定トーナメント(敗者復活戦)
実戦例10 歩が利く筋を意識する 対 渡辺 明三冠 第61期王位戦予選
まとめ
先手の▲5八玉型をメインに現代相掛かりのトレンドである飛車先保留の相掛かりを解説しています。
飛車の位置の違いごとの解説や後手からの様々な作戦を分類し、定跡化しており飛車先保留相掛かりの全体像が分かりやすい内容になっています。
同じ▲5八玉型を解説している「本田奎の相掛かり研究」との比較として本田本は第2章▲5八玉型VS3つの作戦の先後同型策をメインに深く解説しており、本書は後手△4二玉型と△5二玉型の双方を手広く解説しています。そのため本書は総合書的な立ち位置、本田本は▲5八玉型により特化した内容で、難易度も上です。
飛車先保留の相掛かりの基本を知りたいならまずこの本をお勧めし、その後のステップアップとして、▲5八玉型の「本田奎の相掛かり研究」か▲6八玉型の「相掛かり▲6八玉型徹底ガイド」のどちらかを好みで選ぶ形が相掛かりを学ぶ分かりやすいルートだと思います。